ずっと行きたかった場所のひとつ、姫路城。(バケットリスト139)
新幹線に乗るたび、ふと車窓に目を向けると見えてくる、白くて美しいお城──それが姫路城です。
小さくて、でもはっきりと「ここにいるよ」と主張してくる、そのたたずまいが好きで、いつも目で追ってしまいます。
「あ、お城……姫路城だ」
心のなかでそうつぶやくのが、新幹線で通るときの恒例行事になっていました。
青空を背景に、街の向こうにぽつんと浮かぶように見えるその姿は、まるで一枚の絵のよう。あの白さ、あの美しさ。まるで空に浮かぶかのように優雅に、そして堂々とそびえるその姿を遠目で見ては、「一度は行ってみたいな」と思っていました。
昔、時代劇をよく見ていました。
子どもの頃は、両親が見ていたのを横で一緒に見るかたちだったけれど、その中にときどき、白くてきれいなお城が映ることがありました。
「これ、姫路城っていうんだよ」と母が言っていたのを思い出します。
天守閣の美しさ、瓦のライン、白壁のやわらかいカーブ。
よくある「お城のイメージ」そのものなのに、実在していて、そして今も現役で存在しているということが、なんだか不思議でした。

そうだ、行ってみたいと思ってたんだった。
あの天守閣を、近くで見てみたい。中に入って、歴史の風を感じてみたい。
でも、遠くから見ていつも通り過ぎるだけ。目的地は別の場所で、姫路は通過点でした。
そんな私に、姫路城に足を運べるチャンスが巡ってきたのです。
念願の姫路城…だけど、天守閣は断念!
ある日、仕事で兵庫県に行く機会がありました。予定よりも早く用事が終わったのは午後の早い時間でした。
新幹線は姫路から乗ることになっていたので
「え?姫路って、姫路城の姫路だ!」
そう気づいた瞬間、ちょっと笑ってしまいました。
姫路城の場所を地図でチェックすると、なんと駅から徒歩圏内なのです。
次の新幹線まで3時間ほどの空き時間があり、お昼ごはんを軽めに済ませれば、天守閣まで行って戻ってくる時間もきっとある――そう思ったのです。
「これはもう、行くしかない!」と迷わず姫路城に向かいました。
姫路駅を出て大通りに出ると、真正面にそびえる姫路城の姿が視界に飛び込んできます。駅からでもよく見えるほど存在感のあるその白い天守閣。道を歩くたびにどんどん大きくなっていくお城に、思わず胸が高鳴ります。


「やっと来た!」
そう思いながら足取りも軽く、城の正面にあるチケット売り場へ向かいました。
ところが――。
チケット売り場の看板に、「天守閣まで行くには、約60分かかる」と書いてあるのです!


びっくりしすぎて、チケット売り場のスタッフの方に確認すると、やはり60分かかる ということ。
えっ、そんなに?と、思わず聞き返しそうになりました。
時間を逆算すると……微妙。
ギリギリ行けそうだけど、途中で迷ったり、混んでいたり、足元が悪かったりしたらアウト。
あきらめるべきか、ダッシュで行くか。
さんざん迷って、結局私は、門の前で引き返しました。
想像以上に時間がかかる理由
「天守閣までって、そんなに遠いんだっけ?」
「30分くらいで行けるんじゃないの?」
そんなふうに思いながら、城内の案内図を見て納得しました。
姫路城は、戦国時代の「要塞(ようさい)」として設計された、守りの堅いお城。敵の侵入を防ぐために、さまざまな仕掛けや工夫が随所に施されているのです。
たとえば──
- 曲がりくねった通路:まっすぐ天守に向かえないよう、意図的に曲がり角が多く配置されている。
- 不規則な石段:一段一段の高さが異なり、歩きにくくなっている。
- 狭い門や通路:敵の動きを鈍らせるために、途中で通路が急に狭くなる構造。
- 登る階段は6階分:天守閣内も、かなりの段数の階段を登ることになる。
こうした複雑なルートを通りながら進むため、実際に歩くと、思った以上に時間がかかるのです。
それに加えて、観光シーズンには人の流れも多く、混雑でペースが落ちることもあるそう。
「なるほど、これは確かに1時間かかっても不思議じゃないな」と納得。
そして残念ながら、その日の私は、そこまでの時間と余裕がありませんでした。
泣く泣く、天守閣に登るのは次回のお楽しみに取っておくことに。
バケットリストに書いて、次こそ実現!
「行けなかった」ことは、悔しいことではありますが、意外と記憶に残るものですね。
今までは、どうしても天守閣まで行きたかったわけじゃなかったのです。
お城の全体像は門の前からでもよく見えたし、写真も撮れたし、ちょっとだけ空気にもふれられました。
でも……
行けなかった、と思うと、余計に行きたくなってしまいました。
むしろ、「次こそ絶対に!」という気持ちが強くなり、バケットリストに「姫路城の天守閣に登る」 と書き加えました。「いつか行きたい」ではなく、「行く」と決める ことで、気持ちがグッと前向きになります。
姫路城は、世界文化遺産であり、国宝でもある、日本を代表するお城。別名「白鷺城(しらさぎじょう)」と呼ばれ、白い漆喰の外壁が羽ばたく白鷺のように美しいことから、この名がついたといわれています。
400年以上の歴史を持ち、戦火をくぐり抜け、奇跡的に残った貴重な建築。
そんなお城の天守閣に登れるチャンスがあるなら、それは絶対に体験しておきたい。そう心から思ったのです。
歳を重ねるほど、やりたいことは「今」やる
今回、姫路城に行って感じたのは、「体力が必要なことは、なるべく早いうちにやっておいた方がいい」ということ。
天守閣までのルートは、距離だけでなく、階段も多く、かなりの運動になります。
「あと10年経ったら、これをスイスイ登れるかな…?」
そんな疑問も頭をよぎりました。
もちろん、年齢を重ねても楽しめることはたくさんあります。
でも、体力を使うものは、元気なうちに挑戦しておきたい。
これは、バケットリストを作る意味のひとつかもしれません。
「できるときに、やっておく」
そんな意識を持つことで、人生はより豊かになっていく気がします。


次はしっかり時間を確保して、姫路城へ
次に姫路を訪れるときは、もう迷いません。
次は、姫路城に上る予定でスケジュールを調整して、天守閣まで登る時間をたっぷり確保します。
そして、歴史ある建築の中を歩きながら、当時の人々の暮らしや知恵に思いを馳せたい。
それを体験できる日は、もうすぐそこかもしれません。
次こそ、登るぞ!姫路城の天守閣!